セミナー情報

第35回ICTE情報教育セミナー in 関西大学
(共催)関西大学
―コミュニケーションと教科「情報」の接点―

日時:平成19年6月9日(土)  10:00~16:30
会場:関西大学千里山キャンパス尚文館

研究会の様子

10:00~10:10 会長挨拶
  ICTEはその基礎・基本から見直すべき時がきた
  水越敏行 (大阪大学名誉教授/ICTE会長)
10:15~12:30 ワークショップ
  体験しよう!新しいスタイルの「情報」授業
  (A)~(D)の4つにわかれて受講
(A)モデル化とシミュレーションで現象を捉えよう!
講師:越桐國雄(大阪教育大学教授)
    江沢義典(関西大学教授)

モデル化とシミュレーションの「ケーキカップの落下実験」という題材を取り上げた。ポイントの説明後,実際にケーキカップの落下実験を行い,落下運動のシミュレーションを,表計算ソフトを用いて計算した。
(B)明日からできるプログラミング実習
  ―Excel VBAを使って―

講師:江守恒明(富山県立砺波高等学校教諭)
    中橋雄(福山大学講師)
    鐙貴絵(有限会社キャッツ)

まず,プログラミングで生徒にどのような力をつけさせたいか,ということについて議論を深めた。その後,「パックマン」や「インベーダーゲーム」のプログラミングを実際に行った。
(C)コミュニケーション力を高める
  ―グループ・プレゼンテーション指導法自分で勝ち取る10ステップ―

講師:影戸誠(日本福祉大学教授)
    米田謙三(羽衣学園中学高等学校教諭)

グループを組み,良いプレゼンテーションについてブレーンストーミングを行い,発表した。プレゼンテーションに必要なことを説明後,「こんな生徒に育って欲しい」というテーマで,実際にプレゼンテーションを行い,最後にまとめた。
(D)ラジオ番組制作を通して著作権を学ぶ―One Man DJ―
講師:久保田裕(コンピュータソフトウェア著作権協会専務理事)
    田邉治(プロムナード株式会社代表取締役社長)
    田邊則彦(慶応義塾湘南藤沢中・高等部教諭)

ひとりで選曲もMCもできる機械を用いて,ラジオ番組制作を行った。実際に,ラジオ番組制作を体験しながら,BGMをどんな風に使うかや,何に気をつけなければならないかを学んだ。自らが発信する側に立ち,なぜ著作権が大切なのかを考えていった。
13:30~14:00 ワークショップ報告
14:00~14:30 基調講演
  交流学習と情報教育の接点
  講師:久保田賢一(関西大学教授)
現在,地域コミュニティの喪失や情報技術の発達など,大きな社会変化が起きている。そんな中で,子供たちは自分に都合のいい相手としか交流しなくなってきているのではないか。これらのことを背景に,情報教育というのは,社会に参画する態度を養うコミュニケーションに重点を置くべきなのではないかと提案する。社会で活躍している人の多くは,自律的であり,うまく道具を活用し,異質な集団の中で他者と関わることができる人たちである。そして,これらの力は交流学習によっても育まれる。交流学習ではICTと対面コミュニケーション両方必要となる。交流学習は,難しいところもあるが試して欲しい,と締めくくった。
14:45~16:30 座談会
  メディア接触の低年齢化と長時間化―学校の役割・家庭の役割―
  司会:水越敏行(大阪大学名誉教授/ICTE会長)
田邊則彦(慶應義塾湘南藤沢中・高等部教諭)

子供達が初めてパソコンに接する年齢が低くなっていることや,テレビ,インターネット,ゲームに費やす時間が長いという現状に触れた。その上で,自ら考え創造していく力をつけるためにマルチメディアとどう付き合っていくか,学校で果たす役割は何か,メディア接触によって本来伸びていくはずの力を妨げてはいないかなどの問題提起を行った。
堀田博史(園田学園女子大学准教授)

幼児期のメディア接触時間はあまり変化していないが,質的には変化している。テレビの視聴時間は減ったが,ゲームの時間が増えた。また,幼児のテレビ反応行動(まね)の早期化が見られ,これは生活の夜型化や番組内容の変化からきているのではないか,と述べた。一方で,幼児期からコンピュータを取り入れて創造する力をつけようという試みが世界的にあり,日本にも入ってきている。メディア利用を家庭との接点にすることが基点であると考えている,と述べた。
池田明(大阪市立扇町総合高等学校教諭)

高校生と接していて感じる4つの事柄について述べた。
・入学段階でのパソコンの入力速度が早くなってきていること。
・携帯でのメールをほとんどの生徒が使っており,チェーンメールの類を受け取ったことがあるものもいる。モラル教育が高校段階では遅くないのだろうか,ということ。
・携帯中毒・ネット中毒というような症状が見られること。
・ゲームをやる女の子も増えた,ユニセックス化しているのではないか,ということ。
生田孝至(新潟大学教授)

教科「情報」の親学問はコミュニケーション学であるとの見解を示した。また,活字メディアへの転換点がなくなってきていることや,現実もネット社会でも二重の孤独現象が起こっているという現状に触れた。今後,遠隔コミュニケーションと対面コミュニケーションを統合する複合的・総合的研究が必要であると述べた。
16:30 閉会